「でも、よかったね」
 ふと真顔に戻って、秋が言った。
「昨日、心配してたけど――ちゃんと話せたんでしょ?」

 その言葉に小春は少し驚いて、それからゆっくりと微笑んだ。
「……うん。ありがとう、秋くん」

 そのやりとりを見ていた夏樹が、箸を止めたまま無言になる。
 秋はそんな夏樹に向かって、にやっと笑いかけた。

「夏樹くん、小春のこと泣かせたら――いつでも、奪いに行くから」

「……は?」
 夏樹の眉がぴくりと動く。

 すかさず凛が身を乗り出して、両手をバンッとテーブルに置いた。
「そうそう!泣かせたら許さないからね!」

「だよねぇ〜」
 秋が笑いながら凛と目を合わせる。

「え、なにその連携!?なんか仲良くなってない!?」
 小春が目を丸くすると、凛は得意げに胸を張った。

「そりゃあもう――チーム小春ですからっ!」

「はいはい、心配はいらねぇよ」
 夏樹が呆れたようにため息をつき、箸を置く。

 けれどその口元には、ほんの少しだけ笑みが浮かんでいた。

 4人の笑い声が重なっていく。
 あの日の涙が、ちゃんと笑顔に変わっていくように――。