昼休みの食堂は、いつもより少しざわついていた。
 トレーの音、ラーメンの湯気、友達の笑い声。
 その喧騒の中で、小春はお弁当のふたを開けながら、隣の凛と顔を見合わせていた。

「相変わらず、お母さんの卵焼き美味しそう~!」
「ふふっ、ちょっと甘めなんだ」

 そんなやりとりをしながら、前を見ると――
 夏樹が無言でラーメンをすすっていた。
 相変わらず食べるの早いし、顔がちょっと怖い。でも、どこか優しいのを小春は知っている。

 そんな空気の中、凛が箸を止めて、ニヤリと笑った。
「……ねぇ、もしかして私、お邪魔?」

「は!? な、なに言って――」
 小春が慌てるより先に、背後から聞き慣れた明るい声が飛んできた。

「じゃあ僕もお邪魔しちゃおーっと」

 そう言って、トレーを片手に現れたのは秋。
 にこにこと笑いながら、夏樹の隣の席に座る。
 その自然さに、夏樹がわずかに眉をひそめた。

「秋くんもここで食べるの?」
「うん。なんか、いい雰囲気だったから混ざりたくなっちゃって」

 からかうように笑う秋に、小春は苦笑いを返す。
「もう……」