いつもの教室。いつもの席。
 ――なのに、ぜんぜん“いつも通り”じゃない。

 ちらっと前の席を見れば、夏樹が真面目にノートをとっている。
 ただそれだけなのに、やけにかっこよく見えるのはなんで!?

(落ち着け、私。授業、授業に集中……)

 先生に名前を呼ばれて、夏樹がすっと顔を上げる。
「はい、三つ目の答えは――」
 低くて落ち着いた声。
 しかもちゃんと正解してるし。

(……かっこいい)

 体育の時間。
 男子はドッジボールで盛り上がっていた。
 夏樹は本気モードで、次々と相手にボールを当てていく。
 速い、強い、フォームが綺麗。
(なんであんなにかっこいいの!?)

 お弁当の時間。
 机に肘をついて、もくもくと食べてるだけなのに。
 たまに笑ったり、友達とふざけたりするその横顔が、もうずるい。

 ――はぁ。
 いつもと同じ夏樹なのに、なんでこんなにかっこよく見えるの。

 昨日なんか変な技でもかけられた?

 視線を逸らして、机に顔を伏せた。
「……疲れた。心臓がもたない……」

 恋って、体力使う。