「えぇー……」
 凛が少し呆れたように笑いながら、小春の肩を叩いた。

「ま、でも夏樹くん、あんな顔してたらもう自覚あるでしょ。あんたのこと、守るみたいな顔してたし」

「……そんな風に見えた?」

「見えたよ。誰が見ても、あの時の夏樹くんは“彼氏ムーブ”だった!見てるこっちがドキドキしたのに〜!」
 凛は肩をすくめ、笑う。

 小春は頬を押さえながら、心臓の鼓動がまた早くなるのを感じた。
(……なつくん、そんな風に見えてたの?)

 凛はふと、笑顔を少しやわらげて言った。
「……でもさ、小春。あんたが幸せそうでよかったよ」
「え?」
「秋くん、ちょっと落ち込んでたけどね。でも、ちゃんと笑ってた。たぶん、あの人なりに区切りつけたんだと思う」

 小春の胸が、少しだけ痛んだ。
 けれど、凛のその声には優しさがあって、ほんの少しだけ安心もした。