「小春から見た僕はどうだった?」

 遠くで、校舎のチャイムが鳴る前の沈黙が、最後の時を刻んでいた。

「…優しかったよ。秋はいつだって優しかった。かっこよくって、頼りになって、いつも私を助けてくれた」

 そう言った私の肩越しに、秋は少し顔を背け、息をついた。

 そして、静かに手を伸ばし、私の腕をそっと引いた。

「……ごめん。僕は小春が思っているより、意地悪で、少し欲張りみたいだ」

 その言葉と同時に、自然と私は秋に導かれ、カーテンの陰へ。
 柔らかな光に包まれた小さな空間で、秋は私をそっと抱きしめる。
 胸の奥まで伝わる、温かく、強いぬくもり。

 腕の中にいると、心の中のざわつきが少しずつ溶けていくようだった。

 その瞬間、遠くでチャイムが鳴り響く。
 16時の鐘の音が、二人の間に静かに落ちていく――