スマホを取り出して「写真撮ろ」と言うから、
 ちょっとだけ顔を寄せた。
 近づくと、息が触れそうで。
 シャッター音のあと、頬が熱くなるのを誤魔化した。

「……おまえ、笑ってるとき、ほんとガキっぽいな」
 わざと意地悪く言ったけど、
 本当は――あの笑顔、誰にも見せたくなかった。

 秋のことを考えてるのかもしれない。
 けど、今だけは俺だけを見ていてほしい。
 これから先もずっと、こうして隣にいるのは俺がいい。

 そんな気持ちが、胸の奥で勝手に暴れていた。

 小春が叩いてきて、軽く笑う。
 その笑顔を見た瞬間、全部どうでもよくなる。

「……ほら、次、あっち行くぞ」

(……もう離すもんか)

 人混みの中でも、いくら小春が俺から離れようとしたって、手を伸ばして――
 何度でも、あの時みたいに「見つけた」って言ってやる。