反抗期の七瀬くんに溺愛される方法

 文化祭当日。
 朝から、教室はいつもよりずっとにぎやかだった。
 カーテン越しに差し込む光が紙の飾りを照らして、カラフルに揺れている。
 机の上には画用紙、ガムテープ、マーカー。
 みんなの笑い声が重なっていった。

「小春、この辺お願いしてもいい?」
 隣の席の秋が、笑顔で看板を差し出してきた。
 整った横顔と、無邪気な笑顔。朝から相変わらず眩しい。

「うん、いいよ」
 受け取った瞬間、指先が少し触れて――ドキッとする。
 でも秋は気にした様子もなく、楽しそうに筆を走らせていた。

「文化祭、初めてなんだ。なんかワクワクするね」
「うん……私も、今年はちょっと楽しみ」

 自然と笑っていた。
 ――だって、“一緒に回る”って、約束したから。

 そう思った瞬間、ドアの方で声がした。

「おい、そこ。ガムテープどこ置いた?」

 夏樹の声。
 半袖の腕をまくって、段ボールを肩に乗せている。
 普段より少し乱れた髪と真剣な表情に、教室の空気がふっと静まる。

「あ、それならここに――」
 小春が立ち上がろうとした瞬間、秋が先にガムテープを取って夏樹に手渡した。

「これ? 使う?」
「……ああ、悪い」

 夏樹は短く答えただけで、すぐに視線を逸らした。
 その横顔が少しだけ強張って見えて、胸がきゅっとなる。

「なつくん……」
 声をかけようとしたけれど、夏樹は段ボールを抱えたまま、他のグループの方へ行ってしまった。

「小春、これ飾り付ける場所どこだっけ?」
 秋の声で、我に返る。

 でも、手を動かしていても、頭の片隅ではずっと夏樹の背中を追っていた。
 昨日の帰り道の優しさが嘘みたいで――
 何を考えているのか、まるで分からなかった。