反抗期の七瀬くんに溺愛される方法

 夏樹の大きな手に包まれたまま、私はただついて行くことしかできなかった。
 強引で乱暴に見えるのに、その力の奥に、なぜか必死さみたいなものを感じてしまう。

 ……なつくん、どうして?
 心臓がバクバクして苦しい。
 この気持ちは不安なのか、それとも……。

 気づけば階段を降りきったところで、夏樹の歩みが止まった。
 振り向いた彼の横顔は赤くて、でも目は真剣で。

「……かっこ悪いな」
 ぽつりと、そんな言葉が落ちる。

「え?」
 思わず聞き返すと、夏樹は一瞬だけ私を見て、すぐに視線をそらした。

「……知らね。忘れろ」
 口では突き放すのに、繋いだ手はまだ離してくれない。

 胸の奥がじんわり熱くなる。
 
 その背中の大きさも、手の力強さも、小春の知っている幼かった夏樹とは違う。
 
 引っ張られる手が痛い。でも、もう少し。
 あと少しだけ、繋いでいたいと思ったーーー