「いいんだよ、小春はそのままで」

 どんな言葉も、夏樹が言うと私の胸に刺さるからずるい。
 でも、このままじゃーーー。

「いつまでも好きになってもらえないじゃん」
ポツリと呟いたその声は、誰にも届かず消えた。

「ん?何か言った?」
「ーー何でもない」

 小春は拳を軽く握りしめ、新たに決意をする。
(もうすぐ球技大会……私、絶対頑張る。夏樹に見てもらえるくらい、かっこよく、強くなるんだから)

 それからの小春は、少しずつ自分を意識して鍛えたり、勉強を頑張ったり。
 心のどこかで、夏樹の視線を意識しながら――
 走るたび、笑うたび、少しでも彼に見てもらえる自分でいたいと願った。

 ただの“守られる存在”じゃなく、夏樹のそばにいても恥ずかしくない自分になろう。
 小春は胸の奥でじんわりと熱い気持ちを感じながら、未来の自分を想像していた。