反抗期の七瀬くんに溺愛される方法

「ほっとけるわけねぇだろ」
 その言葉に、胸がぎゅっと締め付けられる。
 暗闇の中で光る懐中電灯の光に照らされる夏樹の横顔。
 濡れた髪、真剣な瞳――どれもが、今の私にだけ向けられている。

「……なつくん」
 小さく呼ぶ声に、夏樹は一瞬視線を落とした。

「俺、ほんとは……もう小春に触れる資格なんてないと思ってた」
 低く、でもはっきりとした声。
「でもやっぱり、小春の隣は俺がいい。どんな時も、小春がいなきゃだめなんだ」

 その言葉が、小春の心の扉を開かせた。

「なつくん、鼻の下伸ばしてたじゃない!」
 小春は思わず夏樹の胸を軽く叩く。

「…え?」
 夏樹がびくっと体を揺らし、驚いた表情でこちらを見る。

「私にはあんなに意地悪で冷たかったのに、可愛い後輩ができたら優しくしちゃってさ、鼻の下伸ばして転がされて、バカみたい……!」

 小春の胸の奥に溜まっていた感情が、ついに言葉と行動になって噴き出す。
 小春の手が再び夏樹の胸に当たり、感情のぶつけ合いを加速させる。

「なっ……!鼻の下なんて伸ばしてない!」
 夏樹は必死に否定するが、目はどこか困惑している。

「伸ばしてたの!あっさりキスまでされてさ、ほんとにバカ!」
 小春の声は震え、言葉に涙が混ざる。

「私がもう嫌いって言っても、なつくんは私を好きって言わなきゃだめ!ほっといてって言っても、追いかけてこなきゃだめなの!」

 胸を叩く手に力がこもり、夏樹の胸を突くリズムに合わせて、止めどない思いがあふれていった。