反抗期の七瀬くんに溺愛される方法

 バスがゆっくりと停まり、ガイドさんの声がマイク越しに響いた。
「はい、では到着です。荷物を忘れないようにね~!」

 生徒たちがざわざわと立ち上がり、外の光が差し込む。
 私は凛と一緒にキャリーを引きながら、出口へと向かった。

「うわ、空気おいしい~!」
 凛が伸びをしながら笑う。
 その隣で私も深呼吸をした。バスの中の少し甘ったるい匂いから、外の冷たい風に変わる瞬間――なんだか気持ちが切り替わる。

 すると突然、隣にいた秋が私の手を取った。

「っ!?」

 思わず息が止まる。
 その手は驚くほどあたたかくて、周りの喧騒が一瞬遠のいた。

「……あ、秋くん? なに――」

 そのときだった。
 後ろから、夏樹の声が聞こえた。

「お、おいっ……なにしてんだよ、秋!」

 振り返ると、夏樹が目を見開いて立っていた。
 手に持った荷物を落としそうになって、慌てて拾う。
 その表情が、あまりにも分かりやすくて――胸が痛くなる。