反抗期の七瀬くんに溺愛される方法

 座席表が貼り出されると、ざわっと人の輪ができた。
 私と凛は隣同士。
 前の列には――夏樹と秋。

「ねぇ見て!私たち隣!夏樹くん、小春の前だよ」
 凛が小声で囁く。
 前の席に座る夏樹が、振り返って口を開いた。

「なんで俺、秋となんだよ。俺は小春の隣が――」

「いや、それはこっちのセリフ」
 秋がさらりと遮った。
 少しだけ笑っているような、挑発的な笑み。

「小春は夏樹くんと一緒に座りたくないと思うよ」

「ちっ……」

 夏樹は不満そうに前を向いたが、耳が少し赤い。
 凛がそれを見て、にやっと笑う。

「あの反応、わかりやすすぎじゃない?小春と話したくて仕方ないんだよ。可愛いじゃん」

「ちょ、しーっ!」
 慌てて口元を押さえると、凛が肩をすくめた。

 バスが動き出して、校門を離れる。
 窓の外には、朝の光とともに遠ざかる街。
 胸の奥で、期待と緊張が静かに混ざり合っていく。