凛は腕を組んだまま少し考え、ぱっと顔を上げる。

「よし、こうしよう。グループはそのまま。でも、私たち二人で小春をガードする!何かあったら即効で私がボディブロー入れるから!」

 言いながら凛はニヤリと笑い、周りの視線をわざとらしく気にする仕草をする。
 二人とも吹き出して、私もつられて笑ってしまった。

「それでいいよ」
 秋が小春の肩をぽんと叩いて会話を続けた。

「もし小春が居心地悪かったら、すぐに部屋を変えるとか、行動パターンを変えるとか、臨機応変に対応しよう。僕もいる。無理はさせないから」

 凛の冗談と秋の冷静さが混ざり、重く沈んでいた気持ちが少しずつほどけていく。
 友達がいるって、こういうことなんだなと思った。

「ありがとう。ちゃんと向き合わなきゃいけないなって、私も思ってる」

 小さく自分に言い聞かせるように呟いた。
 胸の中にはまだ不安が残っているけれど、守られてばかりじゃなくて、私も強くなりたい──そう思った。

「よし、それで決まり。旅行は思いっきり楽しむ。だけど、何かあったら私と秋でぶん殴るから心配しないで!」

 凛がまた大げさに拳を握ると、三人の笑い声が食堂に柔らかく広がった。

 その声に励まされながら、私は心の中で小さく誓った。
 夏樹と、ちゃんと向き合おう、と。