「どうせ、朝ごはんも食べてないでしょ?」

秋の声に顔を上げると、彼はリュックからいくつかのパンやおにぎりを取り出していた。

「おにぎり、サンドイッチ、メロンパン、焼きそばパン……」
圧倒されるほどの量が、目の前に並ぶ。

「小春、何が食べたいかわからなくて、色々買っちゃった!あ、大丈夫。残ったのは僕が全部食べるから!」
秋は笑いながら言う。

小春は思わず笑ってしまった。
――なんでこんなに、いつも明るくて、優しいんだろう。

「……走ったらお腹すいちゃったよ〜」
ぽんと小春の頭を軽く叩き、秋はにこにこ笑う。
その笑顔を見ていると、昨日のことも、胸のざわつきも、少しだけ和らぐ気がした。

小春はリュックの中から手に取ったサンドイッチを見つめ、少し照れくさそうに言った。
「じゃあ……これ、もらおうかな」

「うん、もちろん!」
秋の声に、自然と笑みがこぼれる。
朝の光の中で、ふたりの距離が少しだけ縮まった気がした。