反抗期の七瀬くんに溺愛される方法

 街の明かりが遠ざかり、二人は静かな夜の公園に辿り着いた。
 ベンチに腰を下ろす秋の手は、まだ小春の手を握ったまま。

「……僕が戻ろうって言ったばっかりに、巻き込んじゃったね。ごめん」
 秋は少し肩を落として、申し訳なさそうに言った。

「……秋くんのせいじゃないよ」
 小春はそっと手を握り返す。涙で少し熱い手の感触が、胸の奥まで伝わる。

 秋は優しく小春の肩に手を添え、静かに微笑む。
「小春には、僕がいるよ」

 その言葉に、小春の胸がじんわりと温かくなる。
 夜の冷たい空気の中でも、心の奥がほっと柔らかくなるようだった。

「……ありがとう、秋くん」
 小春はまだ涙で目を潤ませながらも、少しだけ笑みを見せる。

「泣いていいよ…よく我慢したね」
 その言葉に、小春はもう涙を止められなかった。
 ポロポロと頬を伝う涙が、胸の奥までぎゅっと締めつける。

「う……ううっ……」
 嗚咽まじりに声を漏らす小春に、秋はそっと腕を強く回した。

小春は肩を震わせ、胸の奥の痛みも不安も全部、秋に預けた。

 秋の胸の温もり。腕の力強さ。
 ただ抱きしめられるだけで、心が少しずつ解けていく。

「僕がいるから……小春はずっと、僕の大切な人だよ」
 優しい声が、夜の公園に静かに響いた。
 小春は嗚咽しながら、ほんの少しだけ安心した気持ちを胸に抱く。

 涙と一緒に、胸の中のモヤモヤも少しずつ流れていく。
 小春は、秋の腕の中で、やっと深く息を吐いた。