反抗期の七瀬くんに溺愛される方法

 店の外、街灯の下。
 見慣れた後ろ姿が見えた。

「……夏樹?」

 立ち止まった小春の視線の先で、
 夏樹が亜美に腕をつかまれていた。

 何かを言いかけたその瞬間――
 亜美が一歩、踏み出して。
 そして、迷いなく夏樹に抱きつき、唇を重ねた。

 世界が止まったみたいだった。

 夏樹の目が見開かれる。
 けれど、離れるまでの数秒が、永遠みたいに長く感じた。

 ――嘘。
 ――やだ。
 息ができない。

「……っ、なにしてんだよ!!」

 隣で秋が声を荒げた。
 次の瞬間、乾いた音が夜に響いた。
 夏樹の頬に、秋の拳があたっていた。

「小春を泣かせたら、全力で奪いに行くって言ったよな」
 低く震える声。怒りと悔しさと、何かを守ろうとする気持ち。

 夏樹は何か言いかけたけれど、声にならなかった。
 小春はもう、涙が止まらなかった。

 秋はその手をぎゅっと握る。
「もう、見なくていい」

 そう言って、小春の手を引き、走り出した。
 夜の街灯の光が滲んで、
 ただ二人の影だけが、静かに遠ざかっていった――。