反抗期の七瀬くんに溺愛される方法

「桜田先輩、私のこと嫌いですか?」
 亜美の声が震えていた。

「え?」と小春が思わず顔を上げる。
 その瞬間、夏樹が間に入るように言った。

「おい、そんなことねぇよ。小春は優しいし、悪くなんて思ってねーから」

――その言葉に、小春の胸がチクリとした。
(そういうことじゃないのに……)
 どうして、そんな簡単に言えるの。

 場が少し重くなったところで、夏樹がわざと笑って言う。

「まぁ、そう見えたなら、小春が拗ねてるだけだよ。お子ちゃまみたいなところが可愛いんだよな」

「……なにそれ」
 思わず小春の声が低くなる。

「なーんだ、拗ねてたんですね。本当に先輩って可愛い」
 亜美の無邪気な笑い声が響く。

 ――夏樹と二人の時に言われるなら、まだよかった。
 でも、彼女の前でそんなふうに言われたくなかった。

 心の奥が、じんわりと冷たくなっていく。

 食事が終わる頃には、もう心の中がいっぱいだった。
 笑い合う二人の声。
 時折、夏樹が自然に亜美へ向ける優しい視線。
 全部、見たくなかった。