「……なつくん、今日も来てくれてありがとね」

 帰り際、玄関で夏樹に声をかけた。
 小春の声に、夏樹は目を細める。

「……勘違いすんな。別に、食べさせてもらってるだけだ」

 そのぶっきらぼうな言い方に、小春はまた胸をきゅんとさせる。
 だけど、指先や背中の距離感は、確かに温かく安心できるものだった。

「ご馳走様でした!」

 リビングに向かって大きな声で叫ぶ夏樹に、小春の両親はまた食べにおいでと笑った。

 そんな姿を見て、ふと思い出した。
 夏樹の母と交わした、私にとって大切な約束ーーー。
 まだ小さかった頃、夏樹と私を優しく見守ってくれたあの温かさ。
 それは、今の夏樹の姿とどこか重なっているように思えた。

(学校ではあんなに冷たいのに……なんで、ここではこんなに自然で優しいんだろう)