反抗期の七瀬くんに溺愛される方法

 そのあと、タッチプールの前で。
「ねぇ、ヒトデ触ってみよ!」
「遠慮しとく」
「えー! 怖がりだなぁ、なつくん」
 小春が笑いながら手を伸ばすと、夏樹が小さく息をついて、隣にしゃがみ込んだ。
「ほら、貸せ」
「え?」
 次の瞬間、夏樹の手が小春の手の上に重なった。
 そのまま一緒に水の中へ――。

「……冷た」
「ふふ、でも、なんかこんにゃくゼリーみたい!」
「お前、なんでも食べ物に例えるなよ」
「だって〜」
 顔を見合わせて、同時に笑ってしまう。

 水のきらめきが二人の手の上で揺れて、時間が止まったみたいだった。

 ――――――――――――

「はい、写真撮ろ」
 イルカショーの後、スマホを構える小春。
「ほら、もっと寄って!」
「はいはい」
 夏樹が少し照れくさそうに顔を近づける。
 シャッター音が鳴った瞬間、頬が触れそうで、小春の心臓がまた跳ねた。

 画面に映った二人は、思っていたよりも自然で、どこか幸せそうだった。
「ね、いい感じ!」
「……まぁ、悪くねぇな」
 その言葉に、小春の胸の奥がじんわり温かくなる。