手をつないで歩くだけで、心臓が少し早くなるのを感じる。
 こんなにドキドキするのは初めてじゃないけど、やっぱり特別な気持ち。

 駅前の街路樹は紅葉が始まっていて、オレンジや黄色の葉が風に揺れるたび、ひらひらと落ちていく。

 駅からJRに乗り込むと、少しだけ混んでいる車内でも、夏樹の腕がそっと私の手を包んでくれる。
 自然に隣に並んで座る。ただそれだけで嬉しかった。

 「水族館、楽しみだね」
 小さく呟くと、夏樹は軽く笑って頷いた。
 その笑顔だけで、なんだか今日一日が輝きそうな予感がする。

 窓の外を流れる景色を眺めながら、私は昨日の帰り道や、夕陽の下で交わした約束を思い出す。
 あの瞬間の温もりや、心臓の高鳴りまで、今でも鮮明に蘇る。

 今日は初めてのデート。
 今まで2人で過ごすことなんで数えきれないほどあったのに、彼氏と彼女になった途端今までとは違うものに感じた。

 緊張もあるけど、楽しさの方が勝っていた。

 ――夏樹と一緒にいるだけで、私は幸せなんだ。