「ねぇ、キスしていい?」
クラスメイトの居なくなった教室は静かで遠くから運動部の声が聞こえてくる。
必死に学級日誌を埋めているわたしの向かいに手持ち無沙汰でペンなんてくるくる回しているのが視界の端で見えて、何となく集中出来ないな、なんて思っていたのがほんの数分前。
今やっと書き終えた日誌から視線を上げて、綺麗な二重の秋人くんの瞳と視線が混じりあった時、徐々に開いていく口から放たれた言葉がそれだった。
ねぇ、キスしていい?
わたしは別に秋人くんと付き合っていないから、ここで「いいよ」なんて言ってキスするのは可笑しいと思う。
「……は?」
素直に思ったのはこれ。
それを行ってくる意味も、目的も、真意も、分からなすぎるし、何を考えているのかも分からない目がいつの間にか目の前にあって。
瞳はヘーゼル色で日本人には珍しい、なんて現実逃避する。
「ねぇ、キスしたらだめ?」
こてん、と首を傾げてもう一度問いかけてくる秋人くんの前髪が目に掛かって、色気が増す。
そんな様子を見てわたしは思った。
秋人くんはやっぱり怖い。



