第一部エピローグ:狼と月の約束
夜が明ける頃、街はまだ眠っていた。
遠くで新聞配達の自転車が軋む音がして、空には淡い藤色が滲み始めていた。
わたしは、凛斗の隣に立っていた。
彼の肩に触れるだけで、胸の奥が静かに満たされていく。
あの夜、月明かりの下で交わした言葉は、夢じゃなかった。
「……寒くないか?」
凛斗が、わたしの手をそっと包み込む。
その手は、もう震えていなかった。
わたしも、もう迷っていなかった。
「ううん。あなたがいるから、平気」
わたしの声に、彼は少しだけ目を細める。
その表情は、かつての“狼”のものではなかった。
孤独に牙を研いでいた彼が、今は誰かのためにその牙をしまっている。
街の抗争は、まだ完全には終わっていない。
けれど、わたしたちの選択が、確かに何かを変え始めていた。
家同士の壁も、過去の傷も、少しずつ溶けていく。
「なあ……」
凛斗がぽつりと呟く。
「お前が隣にいてくれるなら、俺……この街を守ってみたいと思うんだ」
その言葉に、わたしは目を見開いた。
彼が“守る”という言葉を使ったのは、初めてだった。
「……わたしも、一緒に守るよ。
この街も、あなたも」
ふたりの影が、朝の光に溶けていく。
狼と月は、もう孤独じゃない。
それは、誰にも壊せない約束。
夜の底で交わした、静かで強い誓い。
そして、わたしたちは歩き出す。
まだ眠る街の片隅で、
新しい物語の始まりへと……。
第二部 私のフィアンセは、危険な街の総長 編 へ
夜が明ける頃、街はまだ眠っていた。
遠くで新聞配達の自転車が軋む音がして、空には淡い藤色が滲み始めていた。
わたしは、凛斗の隣に立っていた。
彼の肩に触れるだけで、胸の奥が静かに満たされていく。
あの夜、月明かりの下で交わした言葉は、夢じゃなかった。
「……寒くないか?」
凛斗が、わたしの手をそっと包み込む。
その手は、もう震えていなかった。
わたしも、もう迷っていなかった。
「ううん。あなたがいるから、平気」
わたしの声に、彼は少しだけ目を細める。
その表情は、かつての“狼”のものではなかった。
孤独に牙を研いでいた彼が、今は誰かのためにその牙をしまっている。
街の抗争は、まだ完全には終わっていない。
けれど、わたしたちの選択が、確かに何かを変え始めていた。
家同士の壁も、過去の傷も、少しずつ溶けていく。
「なあ……」
凛斗がぽつりと呟く。
「お前が隣にいてくれるなら、俺……この街を守ってみたいと思うんだ」
その言葉に、わたしは目を見開いた。
彼が“守る”という言葉を使ったのは、初めてだった。
「……わたしも、一緒に守るよ。
この街も、あなたも」
ふたりの影が、朝の光に溶けていく。
狼と月は、もう孤独じゃない。
それは、誰にも壊せない約束。
夜の底で交わした、静かで強い誓い。
そして、わたしたちは歩き出す。
まだ眠る街の片隅で、
新しい物語の始まりへと……。
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