マイクとマウンド、夢の向こうへ

昼下がりの教室。

 「進路希望調査票、提出期限は今日だからなー」

 担任の声が頭の中に響く。

 深明の目の前には、まだ白紙のままの用紙が置かれていた。

 周囲の生徒たちは迷わずペンを走らせていく。

 深明の手は止まったまま、ため息をつく。

「どうしよう……書けない……」

傍らの麗菜がそっと微笑む。

 「深明、自分がやりたいこと、思い浮かんだことから書けばいいのよ。
 
これで確定じゃないんだから」

深明はペンを握り直す。

 目の前に広がるのは、今まで、こつこつ分析してきた試合データの数々。

 チームの打率や投球傾向、球種ごとの成績。
 
その全てが、小さな光を放つように机上に並ぶ。

「……これなら、書けそう」

深明はゆっくりペンを動かし、文字を置く。

将来の夢:野球チームでデータを活かす仕事をしたい

書き終えた瞬間、深明の胸にじんわりと温かいものが広がる。

 まだ具体的な仕事内容はわからない。

 それでも。

 自分の目指す方向がはっきりと、文字という形で示されたこと。

 深明にとって、夢への大きな一歩だった。

ペンを置き、深呼吸する。

 汗が滲むその指先には、確かに夢への一歩を握りしめる感覚があった。

「よし……やってみよう」

深明は用紙を丁寧に折りたたみ、提出用のファイルに収める。

 机上の資料も整理しながら、自分の目標が現実に溶け込む感覚を味わった。