マイクとマウンド、夢の向こうへ

旧図書室の奥。

グループセッションの最終回。

机の上には、白紙の紙とペンが一人ひとりに配られていた。

 担当は、深月(精神科医)と道明(臨床心理士)。

深明の両親であり、最後の問いを投げかける者たちだった。

 道明が、静かに語り始める。

 「今日のテーマは、“再定義”です。
 
あなたが、秋山深明という人間をどう見ていたか。
 
そして、今どう見ているか。
 それを、言葉にしてください」

 誰もすぐには書き始めなかった。
沈黙が、部屋を包む。

 深月が、ゆっくりと続ける。

 「謝罪文ではありません。

 これは、あなた自身の“再定義”です。

 支える人を、ただの便利屋だと思っていたなら——
今、あなたは何を変えたいですか?」

 主犯格の生徒が、ペンを握りしめた。
そして、震える手で書き始める。

『秋山さんは、強い人だと思っていた。

でも、本当は、誰よりも繊細で、誰よりも孤独だった。

私は、そのことに気づかず、言葉で傷つけた。
これからは、“支える人”を、支えられる人として見たい』

 別の生徒も、静かに書き始める。

『秋山さんは、記録を取る人じゃなくて、
チームの“心”だった。

私たちは、その心を踏みにじった。
でも、もう一度、信頼される人になりたい』

 道明は、全員の紙を受け取り、黙って読んだ。
そして、最後にこう言った。

 「支える人は、誰に支えられるのか。
 
今日、あなたたちがその答えを見つけたなら——
 それは、秋山深明の“存在”が、あなたたちを変えたということです」

 深月が、静かに頷いた。

 「理解は、謝罪よりも深い。
 
そして、言葉よりも静かに、誰かを救う力になる」

 その言葉に、誰かが涙を流した。
誰かが、初めて深明の名前を“敬意”を込めて口にした。

 
それは、再生の始まりだった。