マイクとマウンド、夢の向こうへ

その言葉に、理事長が初めて口を開いた。

 
「秋山深明という生徒は、支える力を持っていた。
 
だが、支える者が孤立する学校は、教育機関として未熟だ。
 この記録は、彼女の名誉を守るだけでなく——
 我々が何を見落としていたかを突きつけている。

 念の為の確認ですが、この音声にあるように、
 秋山深明を贔屓して不当に成績を引き上げていることは、していませんね?」

 教師たちの目が、一様に縦に振られた。

 

 副校長が、処分案を読み上げる。

• 主犯格:停学2週間、反省文提出、保護者面談、心理カウンセリング義務参加
• 共犯者:厳重注意、カウンセリング参加
• 関係者全員:個別面談+グループセッション(全3回)


 理事長は、処分案を見つめたまま、静かに頷く。

「処分は妥当だ。
 だが、これは終わりではない。

 秋山深明が残した記録を、学校全体で共有し、
 “支える人が支えられる仕組み”を作ること。

 それが、我々の責任だ」


巽先生は、最後に立ち上がり、委員たちを見渡した。

 「これは罰ではない。

 支える人を傷つけた責任を、言葉ではなく“理解”で返してもらうための時間です。

 秋山深明は、誰かのために動いていた。
 その“誰か”に、今度は彼女が守られる番です」

 沈黙のあと、副校長が頷いた。

 「処分案、承認します」
 
その言葉に、委員たちは静かに頭を下げた。

 空気は、確かに変わっていた。