技術部のスタッフたちは、破損したメモリチップから映像・音声・GPSログの断片を抽出。

 復旧されたのは、わずか数分の映像と、断続的な音声。

 でも、それで十分だった。

-画面に映っていたのは——

• 体育館裏の倉庫内
• 濡れた床
• 割れたタブレット
• 倒れたボールケース
• 金属かごの下に、制服の袖
• 動かない深明の姿


 音声には、加害者たちの言葉が鮮明に残っていた。

「秋山さんって、“できる女”ぶってるけど、ただの便利屋じゃん」

「斎藤先輩の彼女ってだけで、調子乗ってるの、見てて吐きそうなんだけど」

「“支える人”って言えば、周りが褒めてくれるから、楽だよね。
 学年1位なのも、先生に贔屓されてるからじゃないの」

 「あんたがいなくても、誰も困らないよ。
 むしろ、いない方が空気がマシ」

 麗菜は、映像と音声をUSBに保存し、八木に手渡す。

 「これを、巽先生に。
 
委員会で使ってもらうよう、お願いして」

 八木は、深く一礼する。

 「かしこまりました。
 
深明様の名誉と安全のため、必ずお届けいたします」

そして、もう1枚。

技術部が復旧してくれたレポートの一部が、麗菜の手元に残された。

 それは、深明が書いていたヨッシーのフォームについての分析。

 たった1枚だけど、彼女の手書きの文字が残っていた。