マイクとマウンド、夢の向こうへ

麗菜が、深明の髪をそっと撫でながら言う。

 「泣いてもいいよ。

 でも、泣かないで耐えたのも、深明らしい」

 深明は、かすかに笑って答える。

 「ヨッシーが来てくれて、助かった。
 

あのまま、夜通し閉じ込められてたとしたら。

……たぶん、泣いてた」

 ヨッシーは、何も言わなかった。

 ただ、ベッドの脇に立ち続けていた。

 その沈黙が、言葉よりも深く、彼女に届いていた。

 保健室の窓から差し込む夕方の光が、彼女の濡れた髪と、背中の痕を、少しだけ温かく照らしていた。
 
 麗菜の自宅、宝月家。

地下の情報処理室。

静かな機械音が響く中、深明のタブレットの破片が、慎重にスキャンされていた。

 破片を届けたのは、麗菜の執事・八木。

 黒のスーツに白手袋、背筋を伸ばした姿は、いつも通りの品格に満ちていた。

 
「巽さまより、深明さまの端末の破片をお預かりしております。
 
麗菜お嬢様の手で、技術部へお渡しくださいませ」

 麗菜は、八木から受け取ったケースを両手で受け取り、静かに頷いた。

 「ありがとう、八木。
 
これは、深明を守るための記録。

  絶対に、復旧させて」