マイクとマウンド、夢の向こうへ

まずは、密着取材をするなら、一番近くにいる立場が適任。
 深明は、野球部マネージャーから引き受けることになった。

 「えっ!?
 マネージャー、本当になってくれるの?
 助かるよ!

 3年生の子、過労で倒れちゃってね……

 ヨッシーくんから聞いてるよ!

 君、MLBにとっても詳しいこと。

 頼りにしているよ!

 僕たちと一緒に、甲子園出場を目指そう!

 出るからには、優勝したいからね!」

 深明の両腕を握りしめながら、野球部の3年生である西野(にしの)さんは感激していた。

 嬉しそうに、野球部内を案内してくれた。

練習終わり、グラウンドで、自己紹介をした。

「秋山 深明です。
 小さい頃から、とMLBの試合を両親と一緒に観戦していました。

 甲子園優勝に向けて、役に立てることがあれば、何でもやりたいです!

 よろしくお願いします」

 ヨッシーが、我先に拍手をしてくれた。

「これからよろしく。
 深明マネージャー」

 ほんの少し、低くなったヨッシーの声。

 それは、深明の鼓膜を甘く揺らした。

 
グラウンド整備、ウォーターサーバーの補充。

 どれも慣れないことばかりだったけれど、深明は手を抜かずに頑張った。

 ウォーターサーバーのボトルは重かった。

 近くにいたヨッシーが、ボトルを軽々持ち上げてくれた。

こういうことをしてもらうと、つい、意識してしまう。

「あ、ありがとう、ヨッシー……」

「これくらい、頼れよ。
 深明の細い腕じゃ、これは無理だろ」

「うん。
 今度から、そうするね。

 ヨッシーこそ、練習頑張って。

 また、今度投球フォームの分析、させてくれる?」

「ん。
 深明が見てくれるなら、いつでも」

夕暮れのグラウンド。

 頬に当たる風は少し冷たい。

 その空気の中に、少しずつだけど、自分が自分らしくいられる場所が出来ている気がした。