マイクとマウンド、夢の向こうへ

 「深明……!」

彼女の身体の上には、倒れたボールケース。

 金属のかごが、肩と背中を押さえつけている。

制服の袖は裂け、腕には擦り傷から血が滲んでいた。
  
金属かごに手をかけ、全身の力を込めて持ち上げる。

 かごを手近なところまで動かしたところで、ガラスの破片に気が付いた。

深明のタブレットだった。

制服は水を吸って濡れていた。

髪はぐしゃぐしゃ乱れ、顔は青ざめていた。

 右足をかばいながら、マットの隅で倒れていた。

 変な方向に曲がっているわけではないから、骨折は免れただろう。
 

「大丈夫か……! 

深明!」

 深明は、かすかに目を開ける。
声は出ない。

 喉が乾いて声が出せないようだ。

 震える指先が、ヨッシーのシャツの裾を弱々しくつまんでいた。

 ヨッシーは、そっと彼女の身体を抱き起こす。

 右足が床についた瞬間、深明が顔を歪める。

 「……っ、痛っ……」

 その声に、ヨッシーは迷わず動いた。

 深明の腰に腕を回し、もう片方の腕で膝裏をすくう。

 一瞬、膝に掛かる手が止まった。

 右膝の皮膚が、切れて出血していた。
 

「歩かなくていい。
 俺が運ぶ」

 深明は驚いたように目を見開いたが、何も言わなかった。

 ただ、静かにヨッシーの胸元に顔を寄せた。