マイクとマウンド、夢の向こうへ

巽先生とヨッシーは映像を見たまま、低く呟く。

 「……おい、何だよこれ」

「深明!」

 画面には、濡れた床と割れたタブレット。

 金属かごの下に、制服の袖。

 そして、動かない深明の姿。

 巽先生は、無言で引き出しから鍵を取り出した。

 ヨッシーに向かって、静かに言う。

 「ヨッシー、先に行け。
 体育館倉庫へのショートカット道は、宝月が知ってる」

 マスターキーが、ヨッシーの手元に投げ渡される。

 それは、信頼の証だった。

“お前なら、任せられる”という言葉の代わり。

 巽先生からマスターキーを受け取ったヨッシーは、すぐに踵を返そうとした。

 その腕を、麗菜が静かに掴む。

 「待って、斎藤くん。

 体育館倉庫まで、普通に行くと遠回りになる。

 ショートカットがあるの。

裏庭のフェンス沿いに出て、旧用具庫の脇を抜けて——

 そこから、体育館の裏通路に直接入れる」

 ヨッシーは、息を呑んだまま頷く。

 「宝月、何で知ってるんだよ……」

 麗菜は、スマホを操作しながら言う。

 
「私の父、それに、深明の両親。

正瞭賢のOBOGしか、知らないショートカットよ。

GPS映像の角度からして、深明は倉庫の北側に倒れてる。

 裏通路から入れば、正面扉より20分は早く辿り着ける。

 鍵は巽先生のマスターキーで開く。
 
……急いで。

 ――深明のこと、頼んだわよ」