麗菜は、父の秘書に連絡を入れた。

盗音機のGPSログを確認してもらうためだった。

盗音機。

麗菜の父が正瞭賢高等学園にいた頃から、使用されている。
宝月家が開発に尽力した。

発信機・GPS・盗聴器・高性能ビデオ録画機能……

あらゆる機能がてんこ盛りの代物。

『自分や親友の身に危険が及びそうなときだけ使うこと』。

厳しく、言い渡されていた。

「秋山深明。
 
試験終わりに食事する予定だった。
 
でも、連絡がつかないのよ。
 
……お願い、探してほしいの」

 電話を切って、願っていた。

 深明の身に、何も起こっていないことを。

 無常にもその願いは、麗菜のスマホに届いた映像で、打ち砕かれた。