マイクとマウンド、夢の向こうへ

試験最終日の朝。

 昇降口で、深明は他部活のマネージャーに呼び止められた。

「秋山さん、巽先生が体育館倉庫の備品チェックをお願いしたいって。

 今日の試験終わりの放課後、空いてますか?」

 「うん、大丈夫。

 行っておくね」

 そのやりとりのすぐ後。

 野球部の後輩が、友達と話しているのが聞こえた。

 「秋山さんって、斎藤先輩の彼女ってだけで、特別扱いされてる感じしない?」

 深明は、少しだけ立ち止まった。

 でも、すぐに歩き出す。

 いつも通りの笑顔で。

 「大丈夫。
 
……慣れてるから」

 麗菜は、その様子を、昇降口に続く階段から見ていた。

何かが起こりそうな予感に、胸の奥がざわついた。

 でも、声はかけられなかった。

 試験が終わった午後。

 校舎は賑わいを取り戻していた。

 答案の話、部活の再開、週末の予定——

 麗菜の頭の中には、ただ1つの疑問が渦巻いていた。

 「深明が、来てない」

 
生徒会室にも、野球部にも姿を見せていない。

試験終わりに食事する予定だったのに、 スマホにも返信はない。