マイクとマウンド、夢の向こうへ

中間試験を目前に控えた5月のある昼休み。

 生徒会室の机は、山積みになっていた。

教室使用申請や部活停止通知の処理。


深明は、生徒会の議事録をまとめつつ、山積みの書類を捌いていた。

 その横で、後輩が無邪気に言う。

 「秋山さんって、何でもやってくれるから、便利ですよね。
 
野球部のマネージャーって、試合出ないし、楽そうだし」

 深明は、笑って受け流した。

 「そうかな。

 まあ……好きでやってるから」

 でも、記録ノートの端には、彼女の指で小さく書き込まれた文字があった。

「便利って、褒め言葉じゃない」

 その日の放課後。

野球部の部室では、部員のひとりが記録ノートを机の端に放り投げた。

 「これ、邪魔だな。
 あとで見とくから」

 
深明は、何も言わずにノートを拾い上げた。

 ページの端が折れていた。

 でも、誰も気づかない。

 ヨッシーも、試験勉強で忙しく、部室には来ていなかった。

 麗菜だけが、深明の表情の変化に気づいていた。

 でも、その違和感に、まだ言葉をかけられなかった。