マイクとマウンド、夢の向こうへ

その日の午後。

地元の強豪校との練習試合が組まれていた。

 ヨッシーは先発ピッチャーとしてマウンドに立った。

 初回は三者凡退、完璧な立ち上がり。

しかし2回。

相手の4番打者に痛烈なツーベースを浴びる。

 そこから崩れるように連打を許し、3失点。

 試合はそのまま劣勢で進み、ヨッシーは5回途中でマウンドを降りた。

ベンチに座り、グローブを握る手が震えている。

 悔しさを押し殺すように唇を噛むその背中を、深明は遠くから見つめていた。


「……まだ全然ダメだな、俺」

 うつむいたまま、低い声が漏れる。

「そんなことない。

 初回は完璧だったじゃん。

 相手もヨッシーを研究してきたんだよ。

 練習試合でも、勝ちたいのは同じだもの」

励まそうとした言葉に、ヨッシーは顔を上げた。

 目は笑っていない。

 「……わかってるよ!
 
そんなこと、言われなくても!

 悔しいもんは悔しいだろ。

 選手でもない、ただのマネージャーのお前に、俺の悔しさは分かんねぇよ……!

マネージャーなんて、所詮ただの雑用係だろ!」

 ヨッシーの語気が強くなる。

 深明は一瞬、返す言葉を飲み込んだ。

深明の胸にも、進路希望を埋められなかった焦りが残っていた。

「あら、そう。

 今からそんなメンタルじゃ、MLBなんて無理ね。

 しかもマイナー契約から這い上がるなんて、もっと。

半年と保たないで帰国するのがオチでしょ」

「……ああ、そうかよ」

ヨッシーは立ち上がり、ベンチを離れていく。

 背中は、夕闇に沈んでいった。