マイクとマウンド、夢の向こうへ

桜が散り、新緑となったある日の朝。

担任が進路希望調査用紙を配り始める。


「今の時点でのやりたいことを書いてくれ。

これが確定じゃない。

『なんとなくこんなことがしたい』で構わない。

それをもとに、来月、ひとりずつ面談をするからな」


教室の空気は、シャーペンを走らせる音と、ため息が半分ずつ。

深明は用紙を前にして手を止めた。

――なにを書けばいいのか、分からない。

頭の中には、ぼんやりと「誰かのそばで支える仕事」という思いはある。

しかし、職業としての形にならない。

深明の横で、ヨッシーは迷いなく「プロ野球選手(MLBマイナー契約)」と書き込み、ペンを置いていた。

 紙の端まで力強い筆跡。

その迷いのなさが、なぜか遠く感じられた。
 
 
一方、麗菜は「管理栄養士」と初めて明記。

用紙を見せながら、「もう腹くくった」と笑う。

 その表情は迷いがなく、キラキラしていた。

 ヨッシーも麗菜も、夢を見つけて、歩んでいる事実。

それが、深明の胸を少しだけ締めつけた。