彼が新入生向けに作ったという、ラジオドラマ。

 それに少し意見を言い添えた。

 「麗菜の母譲りのソプラノ声と、女優である祖母譲りの演技力。

 ラジオドラマだと、それが反映されません。

 宝の持ち腐れになってしまうので、創作テレビドラマにしたほうが良いと思います」

「深明ちゃん!
 君にも来てもらえて良かった!」

 あれよあれよという間に、放送部に入部することになってしまった。

 放送部としての、最初の仕事。

 部活動紹介も兼ねて、野球部に密着することになった。

 密着取材をする役は、深明になった。

「MLB、私の両親より、よく観てるから、適任でしょ?

 斎藤くんのそばにいて、彼の夢も応援できる。

 深明にとっては、一石二鳥じゃない?」

  「ちょっと麗菜!

 べつに私、ヨッシーのことそんなふうに……」

「そうかな?

 入学式の日、斎藤くんを見かけたときの横顔。

 斎藤くんから目が離せない、って顔だったよ?

ずっと、彼のいる野球部グラウンドの方を振り返っていたでしょう。

 バレバレよ? 深明」

 麗菜の大きな瞳が、まっすぐ私を見つめてきた。

深明は、ヨッシーと無邪気に遊んでいた頃を思い浮かべて、ぽつりとつぶやいた。

 「ずっと見てたいな、って思うんだ。

 出会ったときから、ヨッシーが投げてたストレート。

 あれがまっすぐ、心のキャッチャーミットにおさまった感じなの。

 その姿が、私の瞳だけに、映っててほしい。

 そう思うのは、欲張りなのかな」

 その気持ちには、『恋』という名前がつけられるべきである。

 そのことは、深明以外の誰もが、とっくに気がついていた。