マイクとマウンド、夢の向こうへ

学園の、移動教室の合間。

 「……ヨッシー。

 ゴールデンウィーク、どこか行きたい場所ある?」

深明の問いかけに、ヨッシーは教室の壁に体を預けながら、微笑んだ。

「映画、観に行かない?

 前に言ってたやつ、上映始まったらしいし」

「うん、行きたい。

 ポップコーンは大きめでね」

映画デートの約束が交わされたのは、ある放課後の何気ない会話の中だった。

大型連休の中日。

深明は、映画館前で待つヨッシーに声を掛けた。

「ごめん、待たせちゃったかな」

「俺も、今来たとこ」

 ヨッシーは、シンプルな黒Tシャツにジーンズ。
 
足元は黒いスニーカー。

 深明も、ネイビーのシャツワンピースに、シアー素材の白ブーツ。
 
ターコイズブルーのハンドバッグ。

 第2ボタンまで外されたシャツワンピースからは、細いチェーンのネックレスが覗いている。

「行くか。

 チケット、ネットで予約してあったから、発券しておいた」

「ありがとう!

 後で、お金払うね」

「いいよ。
 
いつも練習付き合ってくれる、お礼。

 前に言ったろ?

 彼女には、財布出させない主義なの、俺」

 深明は上映中のスクリーンに集中しながらも、隣にいるヨッシーの存在を強く意識していた。

 手の甲がふと触れ合ったとき、どちらともなくそっと指を絡めた。

「面白かった!

 あのラスト、ちょっとビックリだったよ。

 女優さんのあの泣きの演技は、
 かなりグッときたよ。

 続編があったら、いの先に観たいな」

「あるって、信じてる」

「だといいけど」

深明とヨッシー。

 ふたりは笑いながら、映画館を出る。