マイクとマウンド、夢の向こうへ

日直に割り当てられた部員たちは、毎朝教室に一番乗りで入る。

乱れた机の並びを整え、教卓を拭き、備品の準備をする。

「ビデオ使うから、プロジェクター出して」
「この資料、先生の机に並べておいて」

教師の指示に、黙って動く。

 誰かが「ありがとう」と言ってくれるたび、少しだけ胸が痛む。

「……深明さん、いつもこんなふうに支えてくれてたんだな」
竹田くんは、プロジェクターのコードを巻きながら呟いた。

日直は、地味で、目立たない。

 でも、誰かのために動くことの意味を、彼らは少しずつ理解し始めていた。


 巽先生は、日直表の端に小さくこう書き添えていた。

「責任は、行動でしか償えない。
そして、行動は、心を変える第一歩だ』

 この罰は、ただの懲罰ではなかった。

 それは、深明の尊厳を守るための“教育”だった。

そして、部員たちはその意味を、静かに、確かに受け取っていた。

  この出来事は、後に『合宿ICレコーダー事件』と名付けられた。

 後輩たちからそのまた後輩へと、密かに語り継がれることになる。
 
 
 合宿での成果を報告した巽先生は、理事長から正式に機械導入の承認を得た。

「ありがとう、麗菜」

 「何言ってるの。
学園のためだし、親友のためでもあるわ。

 財閥の力は親友のために使うもの、って言うのが、両親からの教えだから」

麗菜はにっこりと微笑み、深明とヨッシーに視線を送った。

 その目には、親友として二人を支える強い意志が宿っていた。