マイクとマウンド、夢の向こうへ

翌朝6:00。

まだ空が薄暗い時間。

 グラウンドには、数人の部員が黙って集まっていた。

誰も話さない。
誰も笑わない。

 ただ、スコップとほうきを手に、黙々と整備を始める。

前田くんは、水たまりを避けながらライン際の土を均していた。

 竹田くんは、ベンチ裏の落ち葉を一枚ずつ拾っていた。

「……深明さん、毎朝こんなことしてたんだな」

 誰かがぽつりと呟いた。

 その声に、誰も返事をしなかった。

 でも、手の動きは少しだけ丁寧になった。

 

部室の壁には、巽先生が赤ペンで添削した反省文が並んでいた。

 テーマは「マネージャーの役割と尊厳について」
 「言葉の重みについて」。

前田くんの反省文には、こう書かれていた。

『僕は、マネージャーの仕事を“雑務”だと思っていた。
でも、深明さんがいなかったら、僕らは試合に集中できなかった。

 その支えを、僕は軽く見ていた。

 今は、それがどれだけ失礼だったか、痛感しています』

竹田くんの反省文には、こうあった。

『言葉は、冗談でも人を傷つける。
僕は、笑いの中で誰かの尊厳を踏みにじった。
それを“面白い”と思っていた自分が、今は恥ずかしいです』

部室に入るたび、部員たちはその文章を目にする。

 誰もが、少しだけ背筋を伸ばしていた。