マイクとマウンド、夢の向こうへ

巽先生は、ペンを置いたあと、振り返った。

「……俺は教師である前に、父親だ。
 
娘がいる。
 
もし、あいつが……音羽(おとは)が、誰かにあんなふうに話されてたら、俺は絶対に許さない」

その声に、怒りは含まれていなかった。

 ただ、誰よりも重く、誰よりも鋭かった。

「深明は、マネージャーとして、誰よりも真剣にお前らを支えてる。
 
その子を、不当に笑いものにした。

 そして、あろうことか、性的に辱めた。

 それがどういう意味か、分かってるか?」

沈黙の中で、誰かが小さく「すみません」と呟いた。

 巽先生は、それに目を向けず、続けた。

「反省文は、テーマを指定する。

『マネージャーの役割と尊厳について』
『言葉の重みについて』

 俺が添削して、部室に掲示する。

 逃げるな。

 見られることを恥じろ。

 そして、変われ」

部員たちは、息を呑んだ。