マイクとマウンド、夢の向こうへ

ヨッシーの言葉に、深明は一瞬だけペンを止めた。

 ——でも、今夜の記録は、誰よりもヨッシーの努力を残しておきたい。

 そう言いかけた唇は、ヨッシーの優しい唇にふわりと塞がれた。
 
 抗議の声は甘く消え、資料の上で止まった手に、そっと温もりが伝わる。

唇の隙間から漏れる、かすかな吐息。

「……ヨッシー……
優しく、してね?」

 かすかな声に応えるように、ヨッシーはそっと笑みを含め、額を深明の額に寄せる。

 背後から抱きしめる手は、深明の身体を優しく包み込み、二人だけの世界を作り出した。

窓の外には、街灯に照らされた夜の静かな風景。

 書きかけのレポートに、資料の文字。

 深夜の甘い時間の前では、それらすべてが静止していた。

唇が触れ合うたび、吐息と心臓の高鳴りが混ざり合い、ふたりだけの濃密な世界はさらに深まっていく。

「んっ……ヨッシー……」

「好きじゃ足りない。
大好きでも、足りない。

……深明、愛してる」

 深夜の空気が二人の温もりを包み込み、外界の音は遠く、ただ二人の呼吸だけが部屋に満ちていた。

 ふたりは、知る由もなかった。

 同じ頃。

男子部屋の野球部員たちが、口にするのも憚られる、下世話な会話を繰り広げていたことを。