マイクとマウンド、夢の向こうへ

玄関前。

人影が途切れたのを確かめると、深明がそっと歩を止めた。

 「……ちょっとだけ、なら」

 その言葉と同時に、二人の距離が縮まる。

 練習後の温もりが残る体を抱き寄せると、深明はすぐに柔らかな笑みを浮かべた。

 肩に額を預け、短く息を整える気配が伝わる。

ほんの数秒の抱擁のあと、深明が顔を上げた。

 その瞳に迷いはなかった。

 唇が触れるか触れないかの距離で止まり、ヨッシーが小さく頷くと、二人の唇が重なった。

 熱すぎず、しかし確かに想いを伝えるキス。

 離れた後も、鼓動が互いの耳に響き合っていた。

「……深明。
 ちゃんと、好きだよ」

 ヨッシーの囁きに、深明は何も言わず、ただ静かに笑ってもう一度抱きついた。
 
そのまま手を繋ぎ、静かに玄関をくぐる。

 誰にも見られていないことに、少しだけ安堵しながら。


 深夜の静寂が部屋を包む中、扉がノックされた。

 女子は深明だけなので、一人部屋だ。

「深明?
 まだ起きてるの?」

 声の主は、ヨッシーだった。

 低く落ち着いた声が、深夜の静けさに柔らかく響く。

「だって、器具の所感、ちゃんとレポートにまとめないと。
 ……忘れないうちに」

「そういうのは、巽先生に任せればいいの。

 レポートより、俺を見てよ」