マイクとマウンド、夢の向こうへ

他の部員も次々に投げ込み、モニターに映るスロー映像とデータを元にフォームを修正していった。

 踏み出す左足を半歩だけ前に出すよう意識した前田くん。

 球がぐっと前に伸びるようになり捕手のミット音が一段と重く響く。

 
リリースの瞬間に手首をわずかに立てた竹田くん。

 回転が安定して制球がまとまり、キャッチャーの構えたミットに寸分違わず収まるようになった。

初めは画面の数字や映像に戸惑っていた他の部員たち。

 修正後の投球が目に見えて良くなることで、自然と笑みが広がっていった。

宝月家が用意したという、別荘。

 そこに、泊まっていいことになっている。

麗菜の計らいだった。
 
 別荘に向かう途中、ヨッシーと深明は少し遅れて歩いていた。

 他の部員たちは前方で騒ぎながら歩き、二人の間には心地よい静けさが流れる。

「今日のヨッシー、すごかった」

 深明が横目で見上げる。

 練習でかいた汗が、ヨッシーの首筋を伝い、髪の端が頬に貼りついていた。

 その姿に、深明の胸が高鳴った。

 「深明こそ。

 データ見ながら部員にアドバイスしてる姿、誇らしかった。

 深明は、こういうデータ分析してる姿が似合うな」

 そう言いながら、ヨッシーは一瞬だけ視線を逸らした。

 この距離、この空気。

 まだ、高校生のふたりにとって、触れずに我慢するには、酷な距離感だった。