マイクとマウンド、夢の向こうへ

巽先生が資料をテーブルに置いたとき、深明が声をかけた。
 

「先生、そのカタログのPDFを送ってもらえますか?

 麗菜を通せば、調達や試算ができます。
 おそらくは、すぐに」

 放送部を抜けてきてくれた麗菜に事情を話すと、彼女は即座にスマホを取り出した。
 
「分かったわ。
 伯母に聞いてみる」

 麗菜の伯母・彩は、MLB球団の次期オーナー候補。

 送られてきたカタログと数値データを一瞥した彼女は、タブレットを指で滑らせながら口を開く。

「減価償却は4年。

維持費は年間およそ100万円。
 
もしこの機械を活用して部員の成績が伸び、春夏どちらかで甲子園出場できれば——

 スポンサー契約とクラウドファンディングで2年目から黒字化できるわね。

 麗菜、あなたが本気で動くなら、私も本気で動くわよ」

わずか10分で試算を終えた彩。

宮城県のトレーニング施設に同じ機械があると教えてくれた。

 
「だったら、合宿ついでに見に行きましょう。

 効果を確かめてからの方がいいもの。

 そうですよね?巽先生」

 巽先生は、少しだけ目を見開いてから、静かに頷いた。