マイクとマウンド、夢の向こうへ

「まったくもう……八木さんったら」

 麗菜は小さく息を漏らして、温泉旅館の和室に視線を落とした。

 麗菜の執事、八木がサプライズで準備してくれたという「卒業旅行」。

 それは、伊香保にある、温泉付きの静かな宿だった。

ふたりで、こたつに入って、手を握り合い、温もりを分かち合う。

「きみと、こうして毎日会えなくなるの、実感わかないな」

「私も。

 ……まだ、学園で先輩の背中を、探しちゃいそうで」

「麗菜なら、大丈夫だよ。

 もうすぐ出来る後輩を、きちんと、君らしく引っ張っていける」

 直斗は、窓の外に広がる雪景色を見ながら言った。

 夕食の後、ふたりきりの部屋で静かに肩を寄せ合いながら、語り合った。

 夢のこと、進路のこと、そして、これからの不安。

 「離れても、大丈夫ですよね」

 「大丈夫。

 俺、ずっと麗菜の側にいるよ」

 「……はい」

 
唇が触れた瞬間、名残惜しそうに、お互い抱き合った。

 キスは深くなっていく。

 それだけでは足りない、というように、何度も、何度も重なり合った。