マイクとマウンド、夢の向こうへ

深明は、唇をぎゅっと結んで、やっとの思いで小さく言った。

 「……私も、ヨッシーの夢を、一緒に追いかけたいって、本気で思うの。

 楽しいことだけじゃない。

 辛いことも、悲しいことも。

 うまくいかないときも、きっとある。

 うまくいかないときは、2人で背負えば、軽くなるでしょ?

 私の両親は心の専門家。

 さりげないアドバイスくらいなら、きっと出来る」

「深明のおふくろさんにオヤジさん。
 
MLBオタクなだけあるよな……

 試合を観てるというより、データ分析をしてる感じだよ……」

「うん……
 私も、そう思う。

 こうしてヨッシーのそばでいろいろアドバイス出来るのも、お母さんがいてくれたから。

 精神科医の仕事しながら、その傍ら現地観戦して、動画あげて。

 すごいな、って思う。

 私も、いつかお母さんみたいになれるかな」

「あの人の娘だもん。
 ……もうなってるよ、深明」

 その夜、布団に入ったふたり。

しばらく天井を見上げながら、声を潜めて話し続けた。

 好きなものの話、苦手な教科。

 最近観た、野球の試合の話……
 

 それから、未来。

 「もし、俺が高校を卒業してアメリカに行ってもさ」

 「ん?」

 「俺の隣にいてくれる?」

 「……いてほしい?」

 「深明がいないと、全力出せない」

「ふふ。
 考えとく」

 そして、ふたりの間の距離がゆっくりと縮まった。

 深明は、布団の中でそっとヨッシーの手を取る。

 重なる指。

 響く心音。

 「……好きだよ」

 言葉の代わりに交わされた、優しいキス。

それは、そっと触れるだけのもの。


やがて、夜の深まりとともに、深くなっていった。