マイクとマウンド、夢の向こうへ

時計の針は、すでに日付をまたいでいた。

 薪ストーブの火は静かに揺れ、寝室の空気は穏やかだった。

麗菜は眠れなかった。
胸の奥で、何かが静かに騒いでいた。

そっとベッドを抜け出し、廊下を歩く。

 足音を忍ばせながら、キッチンへ向かうと、そこにはすでに直斗の姿があった。

「……眠れなかった?」

「はい。
 ……なんだか、心が落ち着かなくて」

直斗は、ミルクパンの中で温めていたホットミルクを、マグカップに注いだ。

 湯気がふわりと立ち上り、甘い香りが空間を満たす。

「よかったら、どうぞ」

「ありがとうございます」

マグカップを両手で包みながら、麗菜は静かに言葉を探した。

 火の粉の音も、雪の気配も、すべてが彼女の背中をそっと押していた。

「……松倉先輩。
 今日のおみくじ、覚えてますか?」

「もちろん。麗菜ちゃん、大吉だったよな」

「はい。
 
 その下に、こう書いてあったんです。
『心を開けば、距離は自然と縮まる。
 言葉にする勇気が、未来を変える』って」