マイクとマウンド、夢の向こうへ

文化祭の喧騒が去ったあとの教室には、祭りの名残が微かに漂っていた。

 飾り付けの端切れ、使い切れなかったスパンコール。

 机の角に残ったセロテープの跡——

 それらが、あの濃密な数日を証明していた。

 あっという間に日々は過ぎ去り、寒風が吹きすさぶ季節になっていた。

 
 終業式の日。

期末テストが返却され、教室には答案用紙をめくる音と、成績表を見つめる沈黙が交錯していた。

深明の成績表には「学年順位:1位」。
麗菜は「2位」。

 ふたりは、学園の“ツートップ”として知られていた。

ヨッシーは、自分の成績表を深明に見せる。
「学年順位:10位」。

 ギリギリ滑り込んだトップ10。

「……俺にしては、頑張っただろ?」

「すごいじゃん!
 ヨッシー、ちゃんと努力してたんだね」

「まあな。
 深明に見せるなら、ちょっとはカッコつけたいじゃん」

そう言って、ヨッシーはポケットから小さな封筒を取り出した。

中には、イルミネーションで彩られる競馬場の入場用前売り券が二枚。

「これ、ご褒美ってことで。
 俺、頑張ったし。

 深明も、試験勉強付き合ってくれたからこその、この順位だし」

 ヨッシーが差し出してくれた紙。

 イルミネーションで彩られる競馬場の入場用前売り券だった。

それにしても、いつこんなの手に入れたのだろう。

「何でこれ、ヨッシーが持ってるの?
ヨッシーも一緒に、行ってくれるってことでいいのよね」

「はぁ?
当たり前。

行く予定なかったら誘わないだろ、普通。

俺は、隣ではしゃいでる深明を写真に収めるの、何か好きなの。

こんなはしゃぐ姿、俺だけしか知らないんだな、って思うと特別な感じがしてさ。

それじゃダメなの?
 深明」

「いや、むしろ嬉しいけど、さり気なく嬉しいこと言うの止めてくれる?

 照れるじゃん」

「深明の可愛い姿を知ってるの、俺だけなんだよなぁ。

 そのまま俺だけに見せててほしいんだけどさ。

とりあえず、現地集合だと遠い。

 当日は、お前が好きなキャラクターのショーもあるらしいぜ?

 間に合うように深明の家まで迎えに行く」