マイクとマウンド、夢の向こうへ

ここに来る前の模擬店で売っていたような気がする。

「つめた……ありがと。

 嬉しいな、こういうの。

 後でお礼するよ。何がいい?」

「お礼?

 俺の深明への気持ちに答えをくれれば、それでいい」

その言葉に、深明は一瞬だけ目を見開いた。

 ヨッシーの表情は、いつもより少しだけ真剣だった。

「ったく、鈍いんだからよ、深明は。

 こういうの、女の方が敏感なんじゃないの?」

 ヨッシーは、深明の手を引いて、ロッカールームの建物の影へと連れて行った。

 そこは、ちょうど人目を避けられる場所だった。

「昔から思ってたけどさ。

 ……俺、深明のこと好きなんだわ」

 風が止まったような静けさの中で、ヨッシーの声だけが響いた。
 
「深明にその気持ちがあるなら、俺の彼女になってくれる?」

 深明は何も言えなかった。

 胸の奥がじんわりと熱くなり、瞳からひとすじ涙がつたった。

「うちの野球部、部内恋愛大丈夫だったっけ?

 あんまり恋人らしいこと、自信ないかもしれないけど。

 それでも良ければ、よろしくね?」

 そう言って、ヨッシーの頬に軽く口づけた。

 その距離が、ようやく縮まった瞬間だった。

「ねぇ。
この先は、もう少し関係が進んでからね?

呼び方はいつもどおり、ヨッシーでいいよね?

 今更呼び捨て、何か慣れなくて」

「んー?
何でもいいよ。

とりあえず、この後一緒に回るか、深明。

 どうせ、放送部もやってたから回れてないだろ」

「さすがヨッシー。

 からあげと焼きそばが食べたいな」

「俺も空腹だから、深明の分まで買ってやる。
俺、彼女には財布を出させない主義なの」

「ありがとう!
何かこういうの、すっごく嬉しい!

 デートみたい」

「深明の笑顔が見れて、俺も嬉しい。

はぐれんなよ?
 深明」

 手は、自然に絡まった。