マイクとマウンド、夢の向こうへ

昇降口に着いたヨッシーは、深明をしっかりと抱えたまま壁際に立った。


 夕暮れの風が吹き抜け、制服の袖を通して肌に冷たさが染みる。

 彼の腕の中で、深明は微かに身じろぎした。

「……もうすぐ来るからな」

チェックのスカートの裾を揺らしながら、麗菜が静かに現れた。
 
手には、ふたり分のスクールバッグが握られている。
 
もう片方は、深明のものだろう。

スマホケースと同じキャラクターが、鞄にいくつもぶら下がっている。

「斎藤くん、ありがとう。
 すぐに八木が来るわ」

「……別に。
 当然のことしただけだし」

「深明、昔から無理するのよね。

 誰にも弱音を吐かないから、こうして限界を超えてしまう」

ヨッシーは、少しだけ目を伏せた。

「……俺も、気づいてた。
 でも、止められなかった」

「止められないのは、斎藤くんが優しいからよ。

 深明にとって、そういう人がそばにいるのは、幸せなことよ。
 私は、そう思ってるわ」

ヨッシーは、言葉を返さず、ただ深明の額にかかる髪を指先でそっと払った。

 その仕草に、麗菜は何も言わず、静かに目を細めた。

やがて、黒い車が校門の前に滑り込むように停まった。